日本神話の誕生

日本神話は神様が世界を作るのではなく、世界がまず存在して、そこに神様が誕生していくという、世界でも珍しい成り立ちの神話です。日本神話ではこの世界の始まりのことを天地開闢(てんちかいびゃく)と呼ばれており、そこから日本神話が始まります。

神・人・死者の3つの世界で構成される日本神話

日本の神話の特徴は「神様の多さ」です。八百万(やおよろず)の神々と言われることが多い日本の神様たちですが、これはたくさんの神様がいる、ということです。例えば新武天皇などの人間の神様に限らず山の神、海の神、川の神、雷の神、炎の神、稲の神などの「自然の神」がいたり、菅原道真は学問の神様として有名で、生活や知識に関する神様もいます。

日本神話は他の神話や宗教と異なり、唯一絶対の神様がおらず、多様な関係と価値観の世界が形成されているというめずらしい神話です。

日本の神話は主に「古事記」と「日本書紀」という2つの歴史書から紐解かれており、 この2つの歴史書の神話を束ねて「記紀神話」と言われます。 それぞれ少しずつ内容に違いがありますが、このサイトでは主に古事記の内容をご紹介していきます。

古事記の中では日本の神話は「神の世界」「人の世界」「死者の世界」の3つの世界から構成されています。

日本神話のはじまり「天地開闢」

日本の神話のはじまりは、天と地の境目がなく混沌とした何かが渦巻いているという状態から始まりました。膨大な時間の経過とともに、澄んできた気が天にのぼったことで「天」と「地」が分かれていきました。また分かれた「地」では、さらに重い気がしたに沈んでいき、そこに「死」の世界が作られていったと言われてます。

この3つの世界はそれぞれ「高天原(たかまがはら=天の世界)」「葦原中国(あしはらのなかつくに=地の世界)」「黄泉の国(よみのくに=死者の国)」と呼ばれています。

この3つの世界はそれぞれが緩やかに繋がっていて、この3つの世界を神々が往来する姿も描かれています。

高天原に最初の3人の神様が誕生する

日本に最初に誕生する神は「 天之御中主神(アメノミナカヌシ)」という神様です。このアメノミナカヌシは記紀神話の中では宇宙を構成する中軸の神様と言われていて、何かの思想を説く神様ではありません。この神が現れたことで、世界の中心が確立したことになっています。

その次に生まれたのが「タカミムスヒ」と「カミムスヒ」です。それぞれ「タカミムスビ」「カミムスビ」と言われることもあります。この「ムスヒ」という言葉は「結び」の語源となる古語です。このムスヒという言葉はさらに2つの言葉に分けることができます。

「ムス」というのは「苔生す(こけむす)」という言葉と同様に「」「生まれる」「発生する」という意味です。「匕」というのは「霊」のことです。

日本神話の中では、一見生物などは存在しないような土地から草木が次々に生えてくるような場面が多く描かれているのですが、まさにこの何もない状態から生命が生まれる力のことを「ムスヒ」と言います。このムスヒの力で日本の神々も誕生していったんですね。

このアメノミナカヌシ、タカミムスヒ、カミムスヒの3神から世界が広がっていったことから古事記では「造化の三神」と呼ばれています。この造化の三神は天と地が分かれてすぐに、隠居してしまいます。(なぜ隠れたのかは記されていません。)

そしてこの三神が誕生した後に、 宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂ)と 天之常立神(アメノトコタチ)が誕生します。それぞれ、まだ安定していなかった天と地に対して、ウマシアシカビヒコヂ は植物の葦(アシ)が力強く成長していくような、生命力の象徴と言われる神として誕生しました。またアメノトコタチは「天が常に(永遠に)存在する」という意味で、天と地の境界線を確立した神と言われています。

アメノミナカヌシ、タカミムスヒ、カミムスヒ、 ウマシアシカビヒコヂ、 アメノトコタチの5神は別天津神(コトアマツカミ)と呼ばれていて、性別はなく、独りでいる神のため「独神」と呼ばれています。 ウマシアシカビヒコヂ、 アメノトコタチもやがては姿を隠してしまいます。

その後に生まれる神世七代と呼ばれる7世代にわたる神々が誕生します。この神世七代の最後に生まれるのは「イザナギ」と「イザナミ」という神で、この2人は夫婦の神です。この夫婦神によって日本という島国が誕生していきます。

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